注目の新刊とイベント

社会運動史にかかわる気になる新刊やイベントなどの情報を、これからすこしずつ掲載できたらと思っています。昨年のものもありますが、さっそく紹介です。

 

▼福島幸宏編、2023、『ひらかれる公共資料ーー「デジタル公共文書」という問題提起』勉誠社

https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=103697

 

 

「デジタル環境の中、従来の公文書のみならず、公共性をもつ民間のデジタルコンテンツも対象として、利活用可能な形で蓄積されるべき「デジタル公共文書」。/この新たな概念を、利活用者の視点から、新しい知識や社会生活などを生み出す源泉として位置づけ、議論を試みる。」

 

山本唯人さんによる「第3章 「デジタル公共文書」と民間資料―市民活動資料の視点から」などに注目しています。

 

本書に関連して2024年4月27日(土)に大阪大学で次のような研究会が開催されます。

 

ーーーー

 

第5回 オーラルヒストリー・アーカイブ・プロジェクト研究会

https://researchmap.jp/read0147438/研究ブログ

 

日時:2024年4月27日(土) 10時~12時

 

場所:大阪大学豊中キャンパス 芸術棟 日本B教室(オンライン参加可)

 

報告者:武田和也氏(国立国会図書館)

 

タイトル:「世界のオーラルヒストリーデジタルアーカイブー「デジタル公共文書」の視点から」

 

私たちは、インターネットをつうじて様々な資料が共有される時代を生きています。オーラルヒストリーも例外ではありません。誰の、どのような種類の語りが、どこで保存され、どのように公開されているのか、またそこに込められている社会的意義は何でしょうか。日本でも公的機関によるオーラルヒストリー収集の機運が高まる中、世界各地の事例を収集された武田和也氏に現状と課題について報告していただき、意見交換をしたいと思います。

 

参考文献:武田和也「ウェブアーカイブとオーラルヒストリーデジタルアーカイブ」福島幸宏編『ひらかれる公共資料:「デジタル公共文書」という問題提起』勉誠社、2023年

 

主催:オーラルヒストリー・アーカイブ・プロジェクト+大阪大学グローバル日本学教育研究拠点「オーラルヒストリー資料の保存・公開・活用に関する共同研究」

 

ーーーー

 

 

▼田中ひかる編、2024、『国境を越える日本アナーキズムーー19世紀末から20世紀半ばまで』水声社

http://www.suiseisha.net/blog/?p=19430

 

「幸徳、大杉に限らず、エスペラント語などを駆使し、手紙・雑誌・パンフレットを介して、世界各地と交流してきた日本のアナーキズム。石川三四郎の「土民生活」の着想源、日本に触発されたロシア革命の元闘士、大杉の思想を吸収した朝鮮共産主義者、世界へ発信し続けた延島英一、反戦平和運動と連対する日本アナキスト連盟……国境を飛び越えたアナーキーな実践例から日本におけるアナーキズムを捉え直す。」

 

『社会運動史研究』4号の『越境と連帯』、5号の『直接行動の想像力』とあわせて読みたい一冊です。

 

 

▼『レズビアン雑誌資料集成』(杉浦郁子編集・解説、2024年春刊行予定、不二出版)

https://www.fujishuppan.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2024/04/lesbian_pamph.pdf

 

「1970年代後半から1990年代前半までの、首都圏で展開されたレズビアンによる表現活動・社会運動の軌跡を、彼女たちが発行したミニコミ誌と諸資料で跡づける、はじめての本格的な資料集成。」

 

とても重要な資料集の刊行だと思います。

 

 

▼松井隆志、2024、『流されながら抵抗する社会運動ーー鶴見俊輔『日常的思想の可能性』を読み直す』現代書館

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784768410226

 

「戦後日本思想界において間違いなく大きな存在である鶴見俊輔は、アメリカのプラグマティズムを日本に紹介した哲学家、また多岐にわたる領域への言及を重ねた評論家、さらには大衆文化への幅広い目配りをした著作なども数多く、なかなかとらえがたい巨大な存在と言えるだろう。本書は、そんな中でも、これまであまり触れられてこなかった、また著作物としてはほとんどない「社会運動家としての鶴見俊輔」に焦点を当てた。

 60年代の鶴見にとって社会運動へのかかわりはかなり大きな比重をもっていたが、時代の変化、そして本人の抱える身体的・精神的問題もあり、その空気感は次第に薄められていった。今回、この企画発案のきっかけとなったのは、2010年代の「オキュパイ」運動に端を発した新しい世代による社会運動の世界的な盛り上がりである。日本でも、東日本大震災以降、2012年の原発再稼働反対、2015年の戦争法案反対運動など、ながらく無風だった社会においてある変化の兆しが見られた。そこには、60年代から70年代安保の時代での社会運動が持っていた熱や理想主義とは違う、新しい感覚による市民の動きがあると著者は見立てる。それは、従来のいわゆるポジティブで前向きな大きなものを反転させたもので、あくまで個人的なリアリティを持てるもっと小さなサイズの運動で、そこには3つの反転発想がある。

1.「理想的な社会の建設を目標とする」⇒「理想到達ではなく最悪を回避するための抵抗」、

2.「自らをしっかりと確立し主体的に動いていく」⇒「流されていく中で自己と向き合い自分の言葉で考え発見していく」、

3.「他者を巻き込んで大きな流れにしていく」⇒「渦の大きさではなくまず自分のための社会運動を目指す」。

このようなネガティブさを含みつつ「後ろ向き」のままで、社会や政治にかかわっていこうという鶴見の特異な運動理論が、自己責任論の中での生きづらさや疎外感を感じる若い世代への一つの可能性を持つのではないだろうか。本書ではそんな新しい社会運動論を提示してみた。」

 

『社会運動史研究』編者の一人、松井隆志の初の単著です。

 

 

▼4月18日〜20日「記憶の杜 1967→2024 闘争の記憶と痛みを語り継ぐために」/『ゲバルトの杜 ~』公開記念イベント@アテネフランセ文化センター

https://note.com/nondelaico/n/n03ed16be1d6e

 

「代島治彦監督最新作『ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~』が5月25日㊏ユーロスペースにて公開。これまで1960年~70年代の政治闘争に燃えた“あの時代”を描いた作品を発表し続けている代島監督の足跡を辿りつつ、“20世紀の闘争”と“21世紀の闘争”を映画で捉え、振り返る、ということそのものを問いかける。」

 

上映される作品には小川紳助監督による三里塚闘争に関する映画作品もあります。『社会運動史研究』3号の相川陽一さんの論考「地方都市における自主上映者の肖像ーー長野県松本市における映画上映運動の個人資料を手がかかりに」や5号の小泉英政さんへのインタビュー「生き方としての非暴力直接行動ーー三里塚で有機農業に取り組んで五〇年」などとあわせて観たい作品です。