『越境と連帯 社会運動史研究4』刊行です!

『越境と連帯 社会運動史研究4』が2022年7月10日に刊行されました。

 

近年、ミャンマーや香港における圧政を眼前につきつけられるなか、私たち編者は、いまこそ運動史のなかで脈々と続けられてきた国内外の境界線や分断を越えようとする連帯の実践に学び、議論を開くことが大切ではないかと考えました。長くつづく新型コロナウイルス・パンデミックのなか、私たちはこれまで以上に高い国境の壁に向き合っているともいえます。編集作業が大詰めとなった2月末には、ウクライナでの戦争も始まってしまいました。人びとにとって越境と連帯とはどのような経験であったのか、それを考えることの重みは増しているのではないでしょうか。

 

本書冒頭の「越境と連帯の運動史——日本の「戦後」をとらえかえす」では、本書の問題関心をこのように述べています。

 

「「戦後」の日本社会は、「戦場」や「占領」を外部化し、植民地主義を否認・忘却しながら、「復興」と経済成長、そして「平和」——それが現実とかけはなれた幻想としてあったとしても——へと一国主義的に閉じていった。「戦後」という呼称自体が、一国主義的な「復興」や「平和」を前提としているとも言える。

 その一方で、「戦後」のなかから、このような「平和」と「復興」、経済成長自体を問う運動も起きた。それは国内外の暴力、抑圧、分断に向き合いながら、それらを批判し、社会と人びとの関係性をつくり直そうとする営みだった。一国主義的に閉じた日本社会のありようを批判し、その周辺や外部で生じる暴力を問題化しつつ、冷戦のもとで引かれた境界線を問うというかたちで運動は展開していった。」

 

「論考とインタビューが浮かびあがらせるのは、越境と連帯の運動史が、直線的で単一な美しい歴史としてあったわけではないということだ。様々な前史や文脈を背負いながら、人と人、人とモノや出来事とが具体的に出会い——その出会いはときに糾弾や告発といった不和や異和をともなうものでもある——、紆余曲折と浮沈をくりかえしながら、越境と連帯の運動は進められてきた。その展開は、日本における社会運動が持つ一国主義的な傾向やナショナリズム、あるいは男性中心主義との格闘でもあった。人びとは連帯を求めながら、連帯そのものを変革することを求められてきたのである。」(本書「越境と連帯の運動史——日本の「戦後」をとらえかえす」より)

 

そして、本書には、日本・アメリカ・沖縄のベトナム反戦・反軍運動のつながり、反アパルトヘイト運動をつくりだした「旅」、英文雑誌『AMPO』と解放闘争国際情報誌『連帯』の歴史、京都・ウトロ地区の居住権運動、日本朝鮮研究所や「アジアの女たちの会」、「ベルリン女の会」の歩み、日比国際児の権利運動などが紹介されています。好評いただいている「社会運動アーカイブズ インタビュー」ではアナキズム文献センターを取材しました。また、魅力的な運動史の本4冊をとりあげた書評も掲載しています。

 

詳しい内容はこちらをご覧ください。ぜひお手にとっていただけたらと思います。

 

執筆者の皆さん、新曜社の皆さん、そして読者の皆さんなどに支えられ、刊行できました。御礼申し上げます。本書をめぐって議論する場をつくり、広げていきたいとも思っています。どうぞよろしくお願いします。